少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

読了。もう少しお休みです。

中年の女、梅木は微笑んだ。さざなみのようなこまかいしわが目尻と、頬と、顎に容赦なくひろがった。
「わたしはプロなんだ」
「なぜ、いま……」
「それでこそ、呪い。呪われたものが見えるんだ。だって、かつてはわたしもそうだったんだからね」

憤怒と純情の美少女、川村七竈、十七歳は、たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。いんらんな母は、すぐに新しい恋におちて旅に出る。鉄道を愛し、孤高に生きる七竈は、自らのかんばせを、母のいんらんを、恨みながら、せまくちいさな世界で生きていた。


*1面白かったです。
七話あって、各話に可愛そうな大人が一人ずつ、という感じです。まず第一話で衝撃の事実を持ってきて、そこでずぅぅんと引き込まれたところで、第二話の一人称がいきなり”犬” になったりするもんだから、なんだかちょっと笑ってしまいました。
帯には「圧倒的に悲しい。それが読後感だ――古川日出男」 と書いてありますが、わたしとしてはそれは第六話までで、(つまり第六話までは同じく、圧倒的に悲しい、なのですが、)むしろ第七話は、その悲しさの中から抜け出そうとする雰囲気を感じました。まあそれは、238頁「じつは、おかあさんにからむのが、ちょっとばかり、楽しくなってきたのです」 あたりの母とか、260頁「このキハをお持ちなさい、後輩」 の後輩あたりが一役買っていると思うのですが。
つまり第六話までで、なぜ悲しかったかというと、” "ただ一人味方であるところの" 雪風とさえも、いずれは離れていかなければならない*2ということですね。""の箇所の意味で、ラストは悲しいだけじゃない、と。


七竈のどこかズレたしゃべりが楽しくもあり、な一冊でした。あと残ってるのは「私の男」 だけかな。あ、「青年のための読書クラブ」 もあるか。

*1:ああ、帯に感想が書いてあるので引っ張られてしまうけど、

*2:味方っていうのも少しずれた言い方ですが、まあ、二分して表現すると、ということで。