少女七竈と七人の可愛そうな大人
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 118回
- この商品を含むブログ (314件) を見る
中年の女、梅木は微笑んだ。さざなみのようなこまかいしわが目尻と、頬と、顎に容赦なくひろがった。
「わたしはプロなんだ」
「なぜ、いま……」
「それでこそ、呪い。呪われたものが見えるんだ。だって、かつてはわたしもそうだったんだからね」
憤怒と純情の美少女、川村七竈、十七歳は、たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。いんらんな母は、すぐに新しい恋におちて旅に出る。鉄道を愛し、孤高に生きる七竈は、自らのかんばせを、母のいんらんを、恨みながら、せまくちいさな世界で生きていた。
*1面白かったです。
七話あって、各話に可愛そうな大人が一人ずつ、という感じです。まず第一話で衝撃の事実を持ってきて、そこでずぅぅんと引き込まれたところで、第二話の一人称がいきなり”犬” になったりするもんだから、なんだかちょっと笑ってしまいました。
帯には「圧倒的に悲しい。それが読後感だ――古川日出男」 と書いてありますが、わたしとしてはそれは第六話までで、(つまり第六話までは同じく、圧倒的に悲しい、なのですが、)むしろ第七話は、その悲しさの中から抜け出そうとする雰囲気を感じました。まあそれは、238頁「じつは、おかあさんにからむのが、ちょっとばかり、楽しくなってきたのです」 あたりの母とか、260頁「このキハをお持ちなさい、後輩」 の後輩あたりが一役買っていると思うのですが。
つまり第六話までで、なぜ悲しかったかというと、” "ただ一人味方であるところの" 雪風とさえも、いずれは離れていかなければならない”*2ということですね。""の箇所の意味で、ラストは悲しいだけじゃない、と。
七竈のどこかズレたしゃべりが楽しくもあり、な一冊でした。あと残ってるのは「私の男」 だけかな。あ、「青年のための読書クラブ」 もあるか。