イリヤの空、UFOの夏

イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 (電撃文庫)
イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 (電撃文庫)
イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 (電撃文庫)
全4巻読了。
感想はというと、


1巻。まずまずの点火、次が手元にあったら読みたいな(あるのだけれど)、と思う程度。だが、1巻に前編、2巻に後編が載っている話があるので、次が読みたい気持ちは強い。
2巻。1巻での評価を再確認、うん、面白いかな。
3巻。『無銭飲食列伝』 でほのぼのな気分にさせておいて、次の話でフリーフォールのごとく落ちていく展開に引き込まれる。2巻あたりで予感はしてたけど。
4巻。『夏休みふたたび 前編』 では作中では登場人物が最も楽しい時間を過ごしているが、読者としてはそこかしこに垣間見える”先”に楽しみきれない思いを感じる。『同 後編』 にて悲劇が展開されるも、それが、予感していた悲劇とは違っていた。完全な不意打ち。叩きのめされた。読んでるときは確か午前3時半くらいだったが、「今は寝て明日の朝起きてから続きを読め」 という奴がいても黙殺したと思う。後半『最後の道』『南の島』 では、先ほどの、予感していなかった悲劇が終わりを告げると共に、予感していた悲劇が遂行される。その後エピローグがあり、せめて少しだけでもハッピー、な展開を期待していたが(そんなことはありえないとは思っていたが)、ラストの一文でそんな期待も崩れ去る。やはり悲劇の余韻をより感じさせるだけだった。


こんな感じ。秋山瑞人の他の作品も読んでみたくなったかな。うーむ。

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私はこういう「ほのぼのした話の中で、そう遠くない未来で悲劇が待っているという予感を感じる作品」 が苦手。ほのぼの話がこれまた面白くて、出来るならそういう話ばかりを続けていって欲しいとさえ思ってる。悲劇の予感をさせている以上、無理な話なんだけど。
イリヤはそういう話が少なかったからいいものの、後2,3巻ほど延ばしてそういう話を挿入していった挙句に、最後に悲劇に陥れるといったことをされると傷は浅くなかったと思う。具体的には、

・しばらく尾を引く。余韻が抜けない。
・ここでこうしてればあんなことにならなかったんじゃないか、のようなアナザストーリを考えてしまう。「もし誰々がこんな性格だったら」 とかではなく、「もしこちらの選択肢を選んでいたら」 というような話。やってて悲しくなる。そういう自分に、ではなく、そのストーリがどうしようもなく存在し得ないことに。

そういう意味では丁度良い加減……いや、やっぱ結構深いかな。まだ尾を引いてる感じがする。