サマー/タイム/トラベラー

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)
読了。

「いいよ、べつに」
そいつは、夏のあいだに僕がついたたくさんの嘘の中でも、最大級の大嘘だった。

うん、面白かった。1巻の終わり辺りから主人公の不安感が良く伝わってきた。もうページが進む進む。時折、会話の端々に元ネタを潜ませた(っぽい)調子があって、それを知ってたらもっと楽しいんだろうなぁ、とは思ったけど、まあ本筋には関係ないので涙を呑んで見送り。
あらすじは、まあ表題の通りです。TT*1に目覚めた少女と不良天才少年/少女たちのあるひと夏の物語。ていうかこいつら高1なのに本当頭いいな。

「ええと、だからさ……そうじゃないんだよ、とにかく。わかんないかな……時空は別に分岐したりしない。パラレルワールドが『外』じゃないんだ……そうさ、時間次元は無視してもいいんだよ。組み合わせの可能性が『外』なんだよ。それだけを考えてみてよ。n次のマトリクスでさ」
「なんだよそれ」
「とにかく、想像してみてよ」
「なにを」
「n次の可能性マトリクス」

こんな難しい会話も平気でします。ちなみに、上のはTTに関する仮説の話。この辺りの理系的な会話は私としてはかなり興奮できる場面だったのですが、そうでもない人も多いと予想されます。


あと、主人公の不安感がどう切り替わって本編ラスト(エピローグ前)に繋がるのかがイマイチはっきりしなかったけど、ラストの主人公が作ったオブジェの話でまとまったと思う。不安感は残ったまま、不完全燃焼のまま凍結されて現在まで持ち越してきていて、その余韻がなかなか良かったかな。何年も経ってしまって*2凍結されて擦り切れてしまった不安感……言い換えれば悠有を失いたくない気持ち。それが昇華してあのオブジェになった、と感じた。

*1:Time Travel

*2:××年後……というエピローグに反感を覚え「完全に蛇足だ!」 と言う人も(感想リンクを巡った中で) いましたが、既に1巻冒頭で「主人公が書いた過去を振り返る文章」ってことが分かる時点で××年後の話が入ってくるのは当然だと思うのですが。