Y

Y (ハルキ文庫)

Y (ハルキ文庫)

読了。

一九八〇年九月六日土曜日、下北沢駅プラットホーム。
電車が着き、乗降客が入れ違い、発車のベルが鳴り、ドアが閉まり、また電車が動き出す。
これはそのほんのわずかな時間をめぐる物語だ。
そのほんのわずかな時間でもこの手に取り戻せれば――

「最初はタバコだ」 つけたと思ったタバコが消えていた。焦げたあとすらなかった。5秒。次は同じCMが繰り返された。15秒。次は切ったと思った足の爪。30秒――過去に戻っていることに気付いた男は、アルファベットの「Y」 のように分岐した向こう側を、18年前のあの瞬間を取り戻せるのではないかと考えて……。


終わってみるとそこそこだったけど、読んでる時は面白くて仕方がなかった。
高校時代の同級生で親友だった、という人物から電話が掛かってきて、しかしこちらにそんな記憶はなく……で始まる。その奇妙な謎を解き明かす”彼”の物語にグングン引き込まれ、しかしそこで章が変わって”私”の問題に戻る、という卑怯な構成だった。眠すぎたけど、先を読みたくて読みたくて仕方ない。
ただ、謎といっても「なるほど!」 というようなものでもなく*1、「へーそう?」 といった感じで進むんだけど。
最後の最後に”彼”が微笑むシーンが印象的。嬉しさ、かな。

*1:主人公がその謎を知っていて、読者だけが知らないって形だからかも。