クレイジーカンガルーの夏

クレイジーカンガルーの夏 (GA文庫)

クレイジーカンガルーの夏 (GA文庫)

読了。

「東京へ帰って、おかあさんに会いたい」
そのひどく小さな声をかき消すように、飛行機がやってくる。
普通、こんなことを学校で言う奴が居たら、みんな笑うだろう。
多分、そいつは二度とまともな中学生活は送れないだろう。
けれど、今、広樹は笑うどころではなかった。胸が苦しくって、どこかが痛かった。

田んぼの上を通り過ぎるジャンボジェット。ラジカセから流れる歌。中学一年生の夏休み。1979年の夏休み。広樹は毎日プールへ行って、昨日のガンダムの話で盛り上がって、大人の理屈なんかには全然納得できなくて……ノスタルジックなあの日が甦る、青春ストーリー。


 面 白 す ぎ る 。
1ページ目を開いて、そのライトノベルらしからぬ白い部分の無さ、文字の詰まり具合に驚きましたが、5ページぐらいのプロローグを読んで「これはかなり面白そうだ」 という予感がしました。こういうときは大体当たりですよ。
桜庭一樹推定少女」 をちょっと前に読んでいたので、何度も推定少女のある一節を思い出しました。それは61頁「集団でいるときの男子はアホッぽいけど、一人一人になったとき話すと 〜(中略)〜 同じ色の涙をこぼしてるんだと思えた」 あたりのことで、『桜庭一樹は少女の青春時代のアレコレばっかりで、ちょっと忘れがちだけど、男子だって同じなんだ』 みたいなことをその一節を読んで思った(思い出した?) のですが……この本はまさに、その男子側からの青春時代のアレコレを描いてるのです。

大人は大人で大変だけれど、それは子供だって同じで……子供には子供の論理があって、それは大人には納得しがたいものかもしれないけど、子供にとっては大切なことなんだ。

というような気分が味わえます。……多分。


”あの頃” の気分を思い出せる小説でした。うん、面白かった。次巻では、あとがき的に女の子の話っぽいですね。全然違う話でも持ってくるのか、それとも篠原とかでも出すのか。期待です。





余談。
時代が時代なので、ガンダムをリアルタイムで見てたような世代の人なら、より一層楽しめるかと思いますが……正直、ガンダムを見たことがない人にはあまり伝わらないんじゃなかろうか、というシーンがあります。まあ私は見たことがあるのでどうでもいいですが! むしろ”元気でね” の一言を伝える場面では、おおなるほど! と感心したくらいです。


余談2。
ちょうど”母にようやく会える” という辺りで一旦本を置いて、風呂に入ってたんですが……風呂に入ってる間に天啓が。
「ここで”母に拒絶” されたらキツい展開だよな」
……そのまんまだったんで予想できてたからキツくなかったよ! でも”母が我に返った” シーンはキツかったよ! 追い討ちだよ!