火の国、風の国物語 戦竜在野
- 作者: 師走トオル,光崎瑠衣
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
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ゆっくりと左手の剣を掲げる。
もはや迷いはなく、その剣の切っ先はアレスの意志を象徴するかのように真っ直ぐに天を指していた。
「猛々しき赤神オディウスよ照覧あれ! 我らここに眼前の敵兵を完膚なきまでに叩き伏せることを誓約する! 願わくばその犠牲を供物とし、一人でも多くの命が救われんことを!」
成す術もなかった。たった数人の賊に襲われ、守るべき少女を守れず、12歳の少年は自分の無力さを噛みしめていた。もはや自分にできることは、奇跡の到来を祈ることだけだった……。そして、それが全ての始まりであった。
面白かった。
「タクティカル・ジャッジメント」 の作者であり、あとがきにて「裁判所で言葉が飛び交う代わりに、戦場で矢が飛び交うファンタジーです」 とか言ってましたが、すいません正直信じてませんでした。どうせまた山鹿善行みたいなキャラが主人公だろう、と……! ところが蓋を開けてみれば、全うなファンタジー*1でした。もっと色モノだと思ってたのに……。というかそうだと期待してたのに……。
しかしまあ、なかなか面白かったのは否定できないので、それはそれ、いつかタクティカル第二部が出ると信じて待つことにします。
しかしこの巻で一番面白かったのは、”クラウディアがエレナに嫉妬する” 場面や「戦竜在野」 の場面ではなく、”エレナが重傷者にビンタする” ところですね。これはなかなか……。思わぬ伏兵でした。あと”レオン・二度目の転換期” がとても気になりますw
2巻もほぼ書きあがっていて、何事もなければ年始あたりに出版できそう、というのがあとがきでの作者の談。また本書が王国軍の視点だったのに対して、雑誌連載の短編では、この巻では名前しか出てこなかった反乱軍の指導者の視点での物語だそうです。反乱軍側の話がほとんど無かっただけに、これはなかなか面白そうです。期待。