正義のミカタ 〜I'm a loser〜

正義のミカタ―I’m a loser

正義のミカタ―I’m a loser

読了。

「まだ立てるのか?」
一馬先輩は言った。
「まだ立てます」
膝立ちのまま、僕は言った。
「相談があるんだけどよ」 と一馬先輩は言った。「もう立てねえってことにしとかねえか?」
「お願いがあるんですけど」 と僕は言った。「これで、もう立ったってことにしといてもらえませんか?」

「大丈夫、君も明日をかえられる」 ――いじめ、リストラ、格差。こんな社会で生きていかなきゃならない。本当は将来が少し不安なあなたに贈る、書き下ろし青春小説。


うわあ。
面白かった。面白かったけど。最後の最後ですっごい微妙な気分に。うわあ。うわあ。何じゃそりゃ。
プロローグは、「高校の3年間ずっといじめられっ子だった主人公が、心機一転を誓って必死で勉強し大学に入ると、いじめっ子側のリーダーだった男が同じ大学にいることが判明。人気のない所に連れて行かれながらも、早速大学を辞める算段をしていると、『正義の味方研究部』 の人に助けられて――」 という話。
いじめられていた主人公は実は密かに鍛えられていて……というあたりで”「ホーリーランド」” を思い出しましたが、その後も”才能が開花していって主人公が仇敵に目にもの見せる展開” と思いきや、そっち方面はほぼスルーでしたね。むしろ副題の「〜I'm a loser〜」 の方に主眼を置いてる形でした。
で、これが、上記のすっごい微妙な気分になったのと相乗効果で、というか最後の最後でそんな展開を持っていったおかげで、逆に副題の「〜I'm a loser〜」 の意味がしっくりきましたね。最後のそれぞれの勝負で、主人公が言葉にできなかった思いが、この副題の一言に集約されている、と。これは中々良い感じです。ということは、微妙な気分になったアレな展開も、仕方ないと言えば仕方ないかも。


最初の「正義の味方研究部」 設立の由来が、劇的すぎて思わず涙ぐんでしまうような話だったので、”勧善懲悪” モノかと思ってましたが……最後でそうきましたか。まあ、こんなタイトルですから、妥当っちゃ妥当なラインですかね。