時載りリンネ! 3 ささやきのクローゼット

時載りリンネ! 3  ささやきのクローゼット (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ! 3 ささやきのクローゼット (角川スニーカー文庫)

読了。

僕らは黙って顔を見合わせた。急速に、何か淡い予感めいたものが僕らの胸に広がる。
部屋の中は静かだった。
退屈な日曜の午後。外では雨が降り続いているにもかかわらず部屋は暖かかった。ごうごうと音を立てる薪ストーブが柔らかな熱をあたりの空気に伝え、じき雪に変わるであろう氷雨と冷たい雨もここには届かず、留守番特有のあのどこか気だるい空気と共に、暖気はこの古い家屋の上をゆったりと包んでいく。

正式に時砕きとなったリンネ。しかし相変わらず遊んでばかりの彼女に、見かねたリンネのママは家庭教師をつけてしまう――。勉強にも飽いたころ、リンネは時砕きの承認式の際に譲り受けたという、トランクを引っ張り出してくる。


3巻にしてようやく魅力がわかってきました。
なんかこう、小学生のくせに落ち着いた久高の語りが、すごく心地良いです。魅力の半分はこの描写の繊細さですよね*1。もちろん残りの半分はリンネの天真爛漫っぷりですが。3巻では前にも増して発揮されたように思います。
126頁「一緒に連れて行ってくれないのかとしょんぼり肩を落とす凪」 このしょんぼり加減が分かりすぎて困る*2。166頁「じゃあ……そのう、遊佐くんとは会ってないの?」 あれ? いつの間にそんなフラグが? 337頁「……ああ、ネリー」 ここちょっと涙ぐみました。溜め息ひとつ、ふっと緊張がほどけた瞬間で。


これは1,2巻も読み返してみるべきかもしれません。なにか、違う視点で読めそうです。次も期待。

*1:↑で引用してるのは、特に良かった箇所です。「淡い予感めいた〜」 から続く、周囲の風景の一瞬の描写がすごく印象に残ってます。

*2:いま思うと、無邪気に慕われるってのは、ときどき少しうざったい気分になりますが。