不良少女

不良少女 (創元推理文庫)

不良少女 (創元推理文庫)

読了。

「つけを払ってまで嫌味を言われたら、俺の立場がない」
「あら、柚木さんに立場なんかあったっけ」
「真面目で仕事熱心で清貧なフリーライター。弱きを助け強きを挫き、すべての女性を尊敬する。自分で言うのも照れるけど、俺こそ中年男の理想だろう」
「まあね、そういうことにしてあげるわ。人間は少しぐらいの妄想がないと、生きていけないものね」

金欠のためにあちこちから探偵業のアルバイトを引き受け、糊口をしのぐ柚木草平。四件の憂鬱なアルバイトの顛末と柚木自筆の”調書” を収録した連作短編集。


面白かったです。
まあいつも通りなんですが! 変わったことと言えば、あとがきでも作者が言ってる通り、文体が前二作と後ろ二作で変わってることですね。私としては「翻訳調ハードボイルド文体」*1 というのが(ネーミング含めて) 気に入ってるんですが、読んでいても気付かなかったということは、多分どっちでも良いんでしょうね。
以下コメント。35頁「聞かなければ良かった」 本当に。50頁「君なあ、女房みたいに、俺を苛めないでくれ」 これもいわゆる、名探偵の敗北って奴ですか? 203頁「ただ女性に対する悲観主義は、直りそうもないけどな」 これぞ、って感じですよね。


最後に自筆調書が載っていますが、これは軽いのか親しみやすいのか、それとも単に38の中年男でもエッセイを書くと文章が若返ってしまうのか。自分語りをするとこういう感じになるのだな、と柚木草平の新たな面を見た思いです。

*1:例:「○×○」 と、〜〜〜して、某は言った。