木野塚佐平の挑戦だ

木野塚佐平の挑戦だ (創元推理文庫(国内M))

木野塚佐平の挑戦だ (創元推理文庫(国内M))

読了。

事件を解決した暁には、この香川優子と、手に手をとって明るい未来へ踏み出すのだ。
ああ、恋とはなんと甘く切なく、胸狂おしく理不尽であることよ。躰ぢゅうを不安と快感が走りまわり、血圧を押しあげて咽をからからにする。これが宿命赤い糸、飛んで行きたいあなたの元へ、恋に身を焼くホトトギス、知らぬは仏ばかりなり。


いや楽しい。
樋口有介の作品はたいてい殺伐としてるので、たまにユルいのを読むと安心します。定年を過ぎてから憧れの私立探偵を始めたお爺さんが主人公。人生これから、と美女からの誘惑*1 を妄想するのですが、隣には色気も何もない助手しか……という話。どこにいても妄想世界へ飛び立つお爺さんは、お茶目というか何というか。
26頁「まるで本物の私立探偵みたいですよ」 ツッコミ不在……! 140頁「有名な私立探偵の木野塚さんに」 ここで担がれてるとは思いましたが、まさかこれ以上に担いでたとは思いませんでしたね。198頁「木野塚氏がいちばん気にしている問題を、この局面で持ち出すとはこれはひどい


読んでびっくりの結末で、解説でも「バカミスすれすれ」と評されてますが……件の事件を知らなかったのでなんとも。反応的には桃世も知らなかったとは思いますが……。うーむ。

*1:と、それを肩で振り切るハードボイルドな展開