楽園まで

楽園まで (トクマ・ノベルズEdge)

楽園まで (トクマ・ノベルズEdge)

読了。久しぶりの衝動買い。

あんなことをしているから、世界は冷たくなるんだ。
あんなことをしているから、とヨハンは言った。彼の表情にどうしようもない哀しみが浮かび上がるのを、ウォーテンは見た。


だから、楽園が遠ざかる。

「――お願い。なにも望まないから、なにも奪わないで」 雪が降り続ける世界。オッド・アイの少女ハルカと双子の弟ユキジは、異能を持つために悪魔と呼ばれ、教会に追われていた。「狩人」 から逃げ、ハルカは心を失ったユキジの手を引いて、<楽園> を探す――。


なかなか良かったです。
”楽園” ”雪に閉ざされた世界” というと、「Wolf's Rain」 ですよねー。あちらは楽園を目指して荒廃した(広い) 世界を旅しますが、こちらは閉塞した世界で迫害から逃げ回りながら、楽園の手がかりを求めて旅をします。狼と違ってサバイバル能力のない子供で、持っている希望の光はほんとうに微かなものだけ。それでも足掻き続けるハルカの行方は果たして――、という感じでしょうか。世界はひたすらに白く白く、とにかく息が詰まるような気持ちになります。
以下コメント。192頁「どこへも行けはしないのかもしれないと思うのは」 話に呑まれていったのは、この辺りからですねえ。泣きたくなるほど辛いのに、立ち止まっては居られません。254頁「私たちはただ生きていたいだけなのに!」 良いですね。画が浮かぶようで、「おうおう、おうおう」 が印象的です。274頁「失いたくなかった。生きていたいと思ったあれ、目から汗が……。


作者は17歳とのことで、まだまだ期待できそうです。まあ次が出るとしても来年の春以降になるんでしょうが……。とにかく、これは注目ですよ。