ZOKUDAM

ZOKUDAM (光文社文庫)

ZOKUDAM (光文社文庫)

読了。

ついつい、ロボットを目の前に眺めていると、SF映画かアニメの世界に自分がいるような錯覚に陥る。だが、そうではない。いったいいくつのベアリングを交換しただろう。どれだけの制御回路が過剰電流で火を噴いたか。ちゃんと規格どおりのものを作ってくれよ、メーカさん、頼むから、相性が悪いとか神懸り的なことを言わないでくれよ、技術屋さん……、みたいな世界を経験すれば、おのずとこのような無常観、否、冷静沈着な判断ができるようになるのである。


いやー面白かった。楽しかった。
最初は読んでて疑問符が飛びまくったというか、これもしかして「ZOKU」→「ZOKUDAM」 の順番じゃなくて逆のほうが楽しめるんじゃない? とさえ思いました。まあ、84頁「何を隠そう、永良野乃の祖母でもある、というのは嘘で*1 あたり、「ZOKU」 を先に読んだ人たちをひっかけようという意図が見えるので、普通にこの順番で良かったかな。
何が面白いって、読者をおちょくっているんですね。これ無名の新人だったら「何言ってんだこいつ」 ってなるんじゃないでしょうか。森博嗣がやるからこそ逆にユニークになってるって気がします。91頁「この物語をSFとして読もうとしている方も、ソフト的に解決することをおすすめする」 とか、255頁「そうか、あとは次回に続くのだな、と思われたかもしれない。なかなか鋭い洞察であるが」 とか。もうここまでされると物語の結果なんてどうでもいい、ただその過程が楽しければいいのだ、とか思ってたら、それが最終章「自覚があれば勝ったも同然」 に繋がってちょっと面白かった。もしかしてこれも誘導だったりするのかな。いや……まさかね。


なんていうか、森博嗣の小手先というか小手調べというか、……、……。熟語を連発させようと思ったけど何も思いつきませんでした。失礼。



余談。
文庫の解説を読むと感想の内容がそれに引っ張られてしまうので、解説は先に読まないようにしているのですが、今回は後に読んでも駄目でした。だってこの人「ZOKURANGER」 まで読んでるんだもの……。「ZOKUDAM」 を読むうちに、このシリーズの登場人物たちはいったいどういう存在なのかを考えてました。”パラレルなのか実は同じ世界なのか”。しかし今回の解説者は、その問いに解答を示しています。確かにそう考えるとしっくり来る。でもそれは、自分で気付きたかった……っ! その可能性は、自分で気付きたかった……っ!
以上、勝手ながらも恨み言でした。

*1:グーグル日本語入力先生はこのキャラ名も一発変換でした。おそろしい。