疾走する思春期のパラベラム 君に愛を、心に銃を

読了。

「……宇宙にブラックホール以外何もない状態か、これが」 一兎はつぶやいた。その直後、わけもわからず涙が出てきた。両目から大粒の涙がぼろぼろとこぼれて、今まで味わったことのない孤独と寂しさに胸が押し潰されそうだ。永遠という言葉があるが、そんなものは存在しないことを思い知った瞬間だった。いつまでも変わらないものなんてない。なくならないものなんて一つもない。


思春期、駆け抜けました。
といっても、この最終巻まで読んだ読者には分かっていることですが、甘酸っぱい思春期では全然なく、大切な思春期を戦い――今や戦争にまで発展した――に費やした彼ら彼女らの物語でした。完全に殺伐としてるし、圧倒的な彼我の戦力の差に虚しさすら感じます。そして一兎は、アンフォーギブン・バリスタというP・V・Fに目覚めたことにより、宇宙の真理に触れ、世界の虚しさを知ります。それらを通じて思うことは、戦争だろうと平和だろうと、大した問題ではないということ。ただ、どんな状態にあっても自らの価値観を基に行動するだけであるということ……。一兎の決断はもちろん、それぞれがそれぞれの事情と価値観を基に動いていた。単にそれだけである、ということです。


ここに来て作者の別作品とクロスオーバーしてたようで、すれ違った彼の「アフリカンゲームカートリッジズ」 という作品はパラベラムとよく似た、「銃使い」 が活躍する話のようです。ちょっと気になるかも。


余談。
表紙で里香が抱えてる猫が明らかに実写で笑った。ちっさく描かれてるから全然気づかなかったけど。