とある飛空士への夜想曲 上

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)

読了。

「絶対だよ。約束だよ。いつかわたしと一緒に空を飛ぶの!」
「わかった、任せろ、どこまでも、なんなら、レヴァームまででも……飛んでやる!」


面白かったです。
まさかの「追憶」 アナザーサイド。「追憶」 では悪役になっていた天ツ上でも、当然そちらの飛空士にも人生があるわけで……最後までシャルルを追い詰めた、千々石中尉が主人公の物語です。天ツ上でエースだった千々石が海猫に負けてから、どうなったか。単機敵中翔破を成し遂げられた側、というのも面白いですね。
ところで、今回は少年時代から描かれているため、千々石が努力して飛空士になった過程が分かります。それはエースとしての実力に説得力を与えているわけですが、逆に海猫ことシャルルの強さには違和感を与えます。軽く「追憶」 を読み返したんですが、シャルル自身「自分より腕のいい飛空士はいくらでも……」 と言っています。まあ、そういう割にイスマエル・ターンを繰り出しているので、実力はあるのでしょうが……その描写がされていなかったので、あれ? と思った、という話でした。
もっとも、シャルルは戦場を俯瞰視点で捉える力があったので、単なる「空の勘」 の千々石と比べると、第六感の力の差は動画情報と文字情報の差くらいはありそうですが。


「恋歌」 に至るまでの話が補完されるといいな……と思いつつ、次も期待。