猫泥棒と木曜日のキッチン

猫泥棒と木曜日のキッチン

猫泥棒と木曜日のキッチン

積読消化。

その小さな命は、やっぱりとても軽かった。命が重いなんて嘘だ。こんなに軽い。まるでなにも持っていないみたいだ。ああ、それなのに、どうして心のほうはむちゃくちゃ重いのだろう。

「ひかりをすくう」 が二十日に発売されるので、それを買うと 「猫泥棒」 → 「流れ星」 → 「ひかり」 と作者が同じハードカバー3冊が積まれてしまうので、ここらで読んでおかないとという消化例。意外と短くて、行き帰りの電車の中で全部読めた。

というわけで感想。
うん、他の人の感想を見て回ってると、幸せな気分になれた、とかポジティブな部分を褒めているけれど、それだけではないと私は言いたい。第四話「地獄の詰まった箱」 などのネガティブな――心に突き刺さるようなショックな場面も良い。第六話「少年の憂鬱Ⅱ」*1 の一場面、

みずきの周りで何かが渦巻いていた。怒りとか憤りとか、そういうものが。正義感なんてきれいなものじゃなかった。もっとどろどろしたものだった。

なんかも良い……っていつの間に私はこんなどす黒く染まってしまったんだろう、とか思わないでもないけど、そう感じてしまうものは仕方ない。ポジティブだ。ラストのシーン、庭で遊んでる二人を呼ぼうと思ったら家の前の道路で遊んでたなんてシーンも、車が突っ込んでくるんじゃないだろうな、とか鬱エンドを怪しむ私はかなり毒されてる気もするけど、そう感じたんだから仕方ない。肯定(ポジティブ)。


まぁ私のそんな歪んだ感想はともかくとして、実際はもっと爽やか、でもないけど、しんみりとかほのぼのとかそういうベクトルの話です。母が家出して、あっさりと子供を捨てた。だからといって子供は少しも困りはしなかった。でも弟と2人で囲む食卓は何かが足りなくて――そんなお話。何かを喪失し、でも喪失感を持てない登場人物、その喪失感。それを見事に書ききって……って言ってる意味がわかりませんね、ハイ。


うん、まあ、そんな話(もう表現を考えるのが面倒くさくなっ (ry)。ハードカバーで1,300円で2時間で読める話ですが、しかし読んで損した! とは不思議と感じない、たぶんこういう本を良作と言うのでしょう。

*1:〜の憂鬱ⅠとかⅡとかってアレを思い出しますね。アレ。