銀盤カレイドスコープ〈vol.1〉

読了。

「ちょっと高いんじゃない?」
国内大会の点数は、世界の有力選手が参加しないため、国際大会のそれと比べて大幅に上がる。従って、ジャンプさえ全部決めれば、私にも……。
まずいこと、考えちゃった?
「わっ…、やば……」
薄皮1枚で抑えてきた緊張と恐怖感が、一気に意識表面に噴き出し――

7巻のあまりの出来に「もう全巻買えばいいんじゃないかな?」 というくらいお勧めされてたのを見て、とりあえず買ってみた1巻。導入部はこんな感じ。

フィギュアスケートグランプリシリーズ、アメリカ大会。シングルスケーターとして五輪代表に選ばれるためにも成績を残しておきたかったが、結果は12人中10位で惨敗。桜野タズサはそうして失意のまま帰国したが、いつの間にかカナダ人の幽霊ピート・パンプスにとり憑かれてしまっていたことに気付き――。

といっても背後霊のような姿は見えず、声だけが頭の中から響いてきて、五感がタズサと共用といった設定です。つまり、見え聞こえ触れるもの全てをピートも感じるというわけで……あーんなことやこーんなことも?! みたいなコメディ部分もあり。
五感共有ってのがなかなか斬新で、恥ずかしくて排泄を我慢してるとピートにも強烈な腹痛が伝わる、なんてあたりは笑いが止まりませんw


シリアス部分としては、演技を始める前の緊張がばくばくと伝わってくるのが良い感じ。自分の出番は20番目で2時間後なのに、3番目の人の演技が始まった辺りで早くも緊張してきた、ってのもかなり共感。また演技直前に、あまりの緊張から

「ピー…」
言い掛けて……、止めた。
<タズサ?>
「なんでもないわ、平気」

とピートに頼ろうとして止めるというのも良いね。


ただ、用語がいまいち直感で分からないので、演技中はへー、ふーん、くらいしか反応できないのが残念。それにラスト数ページ、ドキドキ感は伝わってくるんですが、盛り上がりに欠けるというか、「CMの後もまだまだ続きます!」 みたいな思わせぶりな文章を書いておいて1ページ後に1巻終了、というのも、「あれ? これで終わり?」 と肩透かしな気分。
まあ……面白くないわけじゃないので、とりあえず2巻も読んでみます。