雲のむこう、約束の場所

雲のむこう、約束の場所

雲のむこう、約束の場所

同氏の「ほしのこえ」 を衝動買いしたので、積んでるのを崩す。
そういや、この本自体も衝動買いだった。

指し示されている。導かれている。
もちろん、偶然ではある。
だけど、もし仮に偶然というものに人格があるとしたら、そいつはぼくに、日本の北端に戻れと告げていた。間違いなく……。

31歳ヒロキの回想で綴られる雲のむこう〜。



すでに原作アニメを視聴済みなので、随所で原作の音と映像が頭の中で再生される。のだが、それが逆にうっとうしいと感じる。原作では、ヒロキとサユリが再会するシーンやら、ヒロキがバイオリンを弾くシーンやらは音と映像が見事に組み合わされていてかなりの名シーンなのだが、当然そこは小説では表現しようもない。なのにそこを感動のしどころと思ってる自分がいるので、当該シーンで、あれ? と肩透かしをくらうのだ。まあ仕方ないけれど。
その代わり、原作アニメでは表現しきれていない心理描写や、タクヤとヒロキの出会いやヒロキの東京での3年等がかなり良い。ノベライズとしてではなく普通の小説として楽しめる。惜しむらくは、何がどうなるのかを知っていることか。そのせいで理解が早いというのもあるから、一概にどちらを先にとは言えないが。
問題は原作エンディングのその後のエピソードで、初読のときはどうにも受け付けなかったが、じっくり読み返してみるとラストの文章がかなり余韻深く逆に好ましく思えた。それによく考えれば、原作冒頭でサユリを幻視する31歳ヒロキから、このラストが実は原作に沿ったものであることがわかる。


原作から別メディアになるのは大抵好きではないんだけど、これは間違いなく例外の1つ。これで次の「ほしのこえ」 が楽しみになった。あ、でも「ほしのこえ」 は先に漫画読んだんだよな。さて。






余談。
「水野理佳」 (ヒロキの東京での女友達)って原作で名前出てたかな? 線路を戦車が通るシーンで『このまま飛び乗っちゃえば云々』 って言ってるから、あるとすればキャストだろう……と思って見直したが、なかった。その代わり「笠原真希」 (タクヤの研究所の女の人) の声優さんの名前が「水野理紗」 だった。あれ?