まほろ駅前多田便利軒
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/03/28
- メディア: 単行本
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「はるのおかげで、私たちははじめて知ることができました。愛情というものは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」
多田には何もいえなかった。かつてたしかに、同じ気持ちを感じたことがあるような気もしたし、それはまったくの幻だったような気もした。
雑事代行を主にする便利屋に、かつての変人クラスメイトが、というのが導入部。
面白かった。初読はどうにも調子が悪くて要所要所をサラッと読んでしまったので、しばらく日を置いてから再読。体調が悪かったり眠かったりすると、シーンを再生したり人物に同調したり出来なくなる性質なので。
しかし、明らかに再読した方が良かった。ある種の予感を感じさせる文章がところどころに挟まってるんだけど、そういうのは真相を知って「そうか、あそこのアレはこのことか!」 とはならないからかな。
真相を知った上でもう一度読むと、初読では捉えきれなかった登場人物の、違和感のある行動の理由がわかる。一見して変人だとわかる行天の謎の行動は、たぶん初読で捉えられる類。というか物語自体がその謎を解きつつ進行していく。しかし常識人としての多田が起こす突然の行動は、初読だけでは「そういやそんな描写あったなあ」 で終わる。そこで再読することで、今度は多田の思考をトレースしながら読み進めることができるようになる、と。
ここまで書いといて何だけど、これって感想というより「私の本の読み方」 だなあ。読める人は初読で読み通せるだろうし。
まあとにかく、面白かったということで。
余談。
各章の扉絵で主人公二人の絵があるんだけど、これがどうしても脳内で再生できない*1。また、三浦しをんはBL漫画に推薦文書いてる、というのをはてなのISBN巡ってて知った(http://www.boiledeggs.com/siori/sioninfo4.html)*2 回路が違うのかもしれない、と思ったけど、絵描いてる人は関係ないか。
*1:どうしても、行天は漫画「BECK」 のアメリカツアーの時の兄弟の兄貴の方に近い絵になる。
*2:こんなのもあった。http://www.boiledeggs.com/info/info12.html#shumi1027