終末のフール
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: 単行本
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「ぼくにできるのは、ローキックと左フックしかないですから」
「それって、練習の話でしょ? というかさ、明日死ぬのに、そんなことするわけ?」 可笑しいなあ、と俳優は笑ったようだ。
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」 文字だから想像するほかないけれど、苗場さんの口調は丁寧だったに違いない。「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
隕石が落ちてきて人類は滅亡する、というニュースから5年。隕石が落ちるまで残り3年。パニックも収まり、一時的にだが平穏が戻ってきた――そんな中で暮らす人々の8つの短編集。
短編というだけあって、こんな所であの伏線が! ということはないものの、それぞれの話がなんとなーく繋がっていく。
印象に残ってる話は4つあって、
「篭城のビール」 は102頁から8節の終わりまでで「ああ……」と深くため息をつき、
「冬眠のガール」 は最後の頁で店員の言葉にニヤリとし、
「鋼鉄のウール」 もハイキックの途中での苗場の言葉にニヤリとし、
「演劇のオール」 で呼び名が自然になっていることに深くため息をつき、最後の頁で大笑いして。
うん、楽しかった。特にこう、中2つの話のような、ふっとした瞬間に誰かの台詞が頭をよぎるのは他の伊坂作品でも何度かあったとおもうけど、それが楽しい。満足。
伊坂幸太郎「終末のフール」 インタビューでも、裏話的なものがあったり、
僕の根底に、死は立ち向かうものじゃないということがあるからですね。
僕はやっぱり、死というのは負けじゃないと思っているんです。いずれみんな死ぬんだし、というのがやっぱり根底にあって。死と戦わなくてはいけないのか? じゃあ死んだ人は負けた人になっちゃうじゃないか、と
なんてのがあったりして。はー。