ジャンプ

ジャンプ (光文社文庫)

ジャンプ (光文社文庫)

読了。

「どうしてそういう発想しかできないのかしら」
「違うのか?」
「だいたいね、今になって何が起こったのかってそんなに知りたがるくらいなら、あの月曜の朝にナグモの帰りを待つべきだったのよ」
「月曜の朝」
「そう、それがそもそもの始まりだったのでしょう?」

「リンゴを買って五分で戻ってくるわ」 主人公のガールフレンドは、そう言って夜道を引き返した。そして、戻ってこなかった。


頭が重い。眩暈がする。苛まれる。
読み終えた後はそんな印象だった。フッと足跡が消えた彼女。果たしてどこへ行ったのか? 何故戻ってこないのか? 僅かな手がかりを片手に彼女の軌跡を追っていく主人公。上質なミステリのようであり、しかしその謎は終盤で方向性が変わり、一層深まることになる。
どうしようもない仮定と後悔と、諦念。途方もない彼女の行方に絶望し、しかし彼女のいない日常は”つつがなく”進んでいく。そのことの切なさに、気づきつつも立ち止まらない主人公には優柔不断さが滲み出ており、また自分にも染み渡る。


冒頭で主人公は”月曜の朝”の優柔不断さを非難されたことを述べるが、だって、でも、と言い訳したくなるのは自分にも似たような点があるからだろうか。
うん、面白かった