FINE DAYS

FINE DAYS (祥伝社文庫)

FINE DAYS (祥伝社文庫)

読了。

「食べ物にあまり関心はありません」 と同級生相手にも関わらず、結城は丁寧語で言った。「あるもので料理するし、出されたものをおいしく食べます」
「あ、そうだよね。食べ物をごちゃごちゃ言うのって男らしくないかも。明美もそういう男の人、好きになれないかも」
「これは?」 と教授が鳥のから揚げを箸で摘み上げ、ちょっと首を捻ったあと、私だけに聞こえるように言った。「鴨かも?」
「絶対鶏です」

彼女に言い寄った人物は4人自殺している。それを知ったのは彼女と知り合った後で――表題作「FINE DAYS」 ほか
3編からなる短編集。


面白かった。溜息ひとつ、ふう、と出るくらい。
「FINE DAYS」 ……まず屋上で必死に喋るシーンは凄かった。焦って、でも届かなくいその瞬間。凄烈だった。あと真実(かもしれない) ものに溜息をつかされ、そして読み終わった後に気づいた80頁「他の、誰も?」 辺りの会話の別の意味に、更に深く溜息。はぁぁ。凄い。やるな作者、といった心境。
「イエスタデイズ」 ……自分のことを省みず、恋人たちを心配する主人公の純粋さが印象的。あと主人公の気分が悪い原因に気づいた時は震えた。裏表紙の紹介文読んでなくて良かった。
「眠りのための暖かな場所」 ……ユーモアな会話、特に引用文あたりは面白すぎる。そして恐怖に引き込まれていく。ぐわー。
「シェード」 ……これはまた。最後の最後に、この少ない分量で感動させてくれるとは……っ! 闇から光を守るには、という話。オチは分かっていても綺麗。


短編全てが面白い、正に珠玉の本だった。お勧め。


余談。
気分が悪くてぼーっとしてる時に、気分が悪くてぼーっとする主人公が出ると凄く共感できる、ってことに気づいた。