スイートホームスイート4 世界で一番すてきな遺産

読了。

「お断りだね、アデライーデ」
静かな碧眼が、願いをはねつける。彼にしては冷然と言っていいほどの物言いだった。
「安っぽいヒューマニズムが、なんだって? 誰に向かってものを言ってる? 私たちはその安っぽいもので世の中が回りますようにと、祈って願って時には殺し合いまでやらかして二〇〇〇年って人種だよ」

『気をつけろ。ヴァチカンはもう動いた』 ――衝撃のロンドンから2ヶ月、アデルは法王庁に対して迎撃の準備を進めていたが、鬱々と武器の整備をする様は暗澹そのものだった。そんなアデルを何とか元気付けようと考える一彦だったが……。


ふう。すっきりした完結だった。
基本的に気の抜けた会話と適度に気の抜けた戦闘。ああ、こんな雰囲気は好きだったなぁ。3巻の終わりで「一気にバトル路線か!?」 とか心配したけど、杞憂だった。口絵1枚目とか、初っ端からの血液型占い談義とか。噛み付くのはそりゃB型だよね。うん。よく分かるぞ一彦。
そんなふざけた中で、引用文や264頁「きっと誰より我々が知っています」 辺りの下りで鋭く切り込んでくるのが印象的。普段おちゃらけてる奴が、すっとシリアス顔に切り替わるのと同じ感じ。


2巻のラストの引きから面白くなってきた今シリーズだけど、上手く角がとれて、仄かに残る余韻が心地よいラストだった。満足。


余談。
「ヴェルナー・フォン・フリューゲルト」 で「V・V・F」 とあったけど、「W・V・F」 じゃ? 既刊でもVVFって記述だった気もするから、今更って感じだけど。