ムシウタ 08.夢時めく刻印

ムシウタ〈08〉夢時めく刻印 (角川スニーカー文庫)

ムシウタ〈08〉夢時めく刻印 (角川スニーカー文庫)

読了。

「なっ……」
化け物が何も言わず、身を翻した。地面を踏みしめる足音を残して、立ち去っていく。
「待て……!」
去る直前の化け物の表情は、同情に満ちていた。
殺す価値もない。苦しむ彼を見届ける必要すらない――そういうことなのだろう。

05巻で"大喰い" との戦いに死力を尽くした"かっこう" は、暴走する虫を抑えきれずに、隔離施設に収容されてしまう。このままでは殺される――いや、殺されることすらなく生き地獄に落とし続けられる――そう考えた"かっこう" は施設を脱走するが……?


これは……! 今までのシリーズで一番かも。*1
ムシウタで○○××××が出てくるとはついぞ思ってなくて、まぁ何というか、見事にやられた! っていうの? これ。最後の最後まで気づかなかった。作中で何度も「あれ?」 と思ったんだけどなあ……。まあ既刊あんまり覚えてないし、ってことで僅かな違和感はスルーしてた。くそう。
ポイントを挙げると、まずは304頁「己の命をそこへ置いていくだけの価値がある、平凡な日常を得た」 辺りでもうグッときた。そして319頁「しょうがなくだぜ? 手間のかかるヤツだ」 はツボど真ん中。こんな台詞大好き。あと331頁「なんと至福なことか」 とかも。「何でもないことだけど、単純にそれが嬉しくてたまらない」 ってのがもうたまらない。


そういやbug.4thのキャラも出てきてて、「やっぱ読んでてよかった!」 とか思ってたけど、読み終わった今となってはどうでもいいな。些事些事。



追記/余談。
他の人の感想を見て回ると、どこも「既刊と比べると微妙」 「先生素敵」 だった。前者のような逆の感想がいっぱいあると、「あ、やっぱりそうかも?」 とそっちに揺れちゃうのが困った話。いや、面白かったはずなんだよ! でも他の感想でマイナス補正されちゃうのが切ない……。後者は諸手を上げて賛成だけど。

*1:01,02,03とかあんまり覚えてないけど。