お隣の魔法使い 始まりは一つの呪文

読了。

「ブーケを取れたなんて、すごいじゃないですか。ミズ・メアリーならやれれると信じていましたよ」
ツクツクさんが、感心したような納得したような顔で言った。ちょっと待って、いったい何を信じていたって言うの。
「あっ、誤解しているでしょう。あたしがライバルをねじ伏せて、このブーケを奪い取ったと思ってない?」

一日家を留守にしていたら、空き地だったはずの隣に家が建っていた。不思議な出来事だったが、そこに住み始めたお隣さんはそれに輪をかけて不思議な人で――。


たまにはこんな、まったりしたのも。
特段何かが起こるわけでもなくて、私ことメアリー・フィールズとお隣のトゥックトゥイックさん(通称ツクツクさん) との日常のいろいろ、という話。魔法使いのようで、実際に魔法を使ってる場面はなく、「なんだかよく分からないけど、不思議なこともあるもんだわ」 で留まっている。章が四季ごとに分かれてるけど、実際は更に細かく分かれて連作短編の趣き。
全編通してほんわかした雰囲気が漂ってて、そこに所々挟まってくる、とぼけた会話や思わずくすりと微笑むような文章が、薄いながらも良い味を出してる。特に160頁「そんな穴の掘り方は前代未聞だわ」 は不覚にも吹いたw そんなアホな、って呆れを通り越して、アホすぎて面白い。


実際発音してみると言いにくいトゥックトゥイック。キーボードで打つにも一瞬戸惑う。ツクツクの、なんと言いやすいこと打ちやすいこと。2巻もあるのでさっさと読もう。