タザリア王国物語 影の皇子

読了。

「お前は皇子の身代わりであることで、自らの価値を見出している。皇子の顔を持たない自分を望みながら、そうなることを恐れている。皇子に似ていかないことに恐怖を抱いている」
ジグリットは首を振った。「そんなことはない」
「いいや、そうだよ。そうなんだよ。だからこそおまえは皇子」

貧民街で孤児として暮らしていたジグリットはある日、騎士団長のグーヴァーと出会い、連れられていった王宮の先で更に自分と瓜二つの少年――タザリア王国の皇子と出会う。


実に濃密。面白かった。
濃密というか、読むのに時間と根気が要ったって話だけど。文字が詰まってるんだよなあ。それにけっこう分厚くて、読む前は全然気乗りしなかった。
しかしこれが、全九章の第三章まで読み終わった頃にはすっかりのめり込んで、眠気も吹き飛んでいく面白さだった。精神的に追い詰められたジグリットが不気味なファン・ダルタと厩舎で会話するシーンは実に印象的。
そしてその後、第四/第五/第六/第七-八章とそれぞれ短編のような別個の話になってるんだけど、これまた各話がこれでもかというほど読み応えがある。そのせいか、各話が妙に長い話に感じた。特に第六章の少女神の話なんかは40ページ強しかない*1。実際に3ヶ月の旅を体験してるような気分になったのかも。新鮮な体験だった。


そして巷(?) で話題のリネア様は、笑っちゃうほどの落ち込みぶりと回復ぶりで、なるほど大人気のわけだ、という感じ。頑張れジグリット。

*1:40ページしかなかったの!? と驚いたほど。