月光スイッチ

月光スイッチ

月光スイッチ

読了。

「どうしてキノコを干すの」
うまいんだよ、とセイちゃんは言った。
「そのまま食べるのとは、まったく違う味になるんだ。味が濃縮されるっていうか。干したキノコを煮ると、ダシを入れなくても、キノコの旨みだけで十分なんだ。今度作ってやるよ」
「だからセイちゃんも干されてるの」
「そう、うまくなるようにね」

例えば月の明かりを灯すように――、世界を少しだけ変えるスイッチがある。奥さんが妊娠して里帰りしている一ヵ月半、わたしはセイちゃんと新婚生活(仮) を始める。


まあまあ、普通。
何の加味もない橋本紡、といった印象。この文章に色々足していくことで、『流れ星』 『ひかり』 『空色』 にそれぞれ派生していくというか。この3作の、感動的な場面とか緊張感のある場面とか、そういうところじゃない、何でもないような文章を好きと感じるなら読んでみてもいいかも。
……まいった。とりたてて感想がない。スイッチが切り替わる瞬間、切り替わってしまう瞬間、それはもうどうしようもなくて、例え愚かだと分かっていてもどうにも出来ない、とかかなあ。でもそれだって悪いことばかりじゃなくて、スイッチした世界だって楽しいことがあるんだよ、みたいな……。


しかし短い。サクッと読めた。「初出 野性時代二〇〇六年一〇月号」 ……その一冊に収まったのも納得。ただ読みたければそっちを買った方が安いかな。買えるのかどうか知らないけど。


余談。
この作品には”弥生” と”睦月” という姉弟が出てきて、ちょっと前に読んだ竹岡”葉月” 『マイフェアSISTER』 には”師走” と”睦月” という兄妹が出てきて、更にそのイラストを描いているきゆづきさとこ『GA』 には”如月” というキャラが……
ってどうでもいいか。