愚者のエンドロール

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

読了。

「で、でも先輩。密室はどうなるんです。鍵がかかってたのは」
何でもないことのように、沢木口はさらりと答える。
「別にいいじゃない、鍵ぐらい」
「……!」

「試写会に行きましょう」 千反田が言ったこの提案に、かなり乗り気がしない奉太郎だったが、逆らう方が無駄なのは分かりきっていることで……そしてまた"事件" は幕を下ろす。古典部シリーズ第2弾。


これは! 面白くなってきた。
今回は連作短編ではなく、1本のミステリーだった。脚本家の本郷が不在につき未完成のままの映画。彼女しか知らないその結末を推理する――という話。『毒チョコ』 の本歌取りらしく……というのも読んだことないからなんだけど。Wikipediaの概要を読むと、幾人かが不確定な条件から自分の推理を展開する、という辺りのことなのかな。あとチョコレート・ボンボン。
氷菓』 の件もあるので、自分で幾らか推理もしてみた。まずは1つ目、”ザイルを客席に下ろして、舞台から上手袖へ行く” という方法。しかしこの方法は、2番目の推理・羽場によって否定されたというか、よく考えればキャットウォークから丸見えだから却下。まあ犯人が複数ならその限りじゃない……とは思うけど。
2つ目。”海藤の持っていった鍵は上手袖の鍵でなく、別の鍵。犯人は上手袖に海藤をおびき寄せて殺し、海藤の鍵を転がし、そのまま上手袖に鍵をかけた” という方法。鍵は後ですり替えても可。これは割と自信があったというか、思いついた時は「こ・れ・か!」 と思わず唸った程だけど……213頁「どこにもザイルが出てこなかったわよ」 と指摘されてる通り完全ではなかったし、よく考えれば第二の密室も解けてなかったので却下。まぁその2点はラストの奉太郎の推理で解決するんだけど……どうも、50頁「海藤の持っていった鍵だ」 辺りから、(描写はないけど)鍵はそれぞれ判別がつく様子。だとするとすり替えは不可だから、第一の密室が不完全ということに。誰も鍵に気付かない、という心理トリックだとしても、その可能性があるなら犯人は鍵をすり替えるべきだし、やっぱり不完全。


……というわけで、やっぱ奉太郎の方法が一番華麗かなと。うーん、残念。でも楽しかった・な!