彼女はたぶん魔法を使う
- 作者: 樋口有介
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/07/22
- メディア: 文庫
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「できたら今夜会えないか。俺がそっちへ行ってもいいし、君が新宿あたりまで出てこられれば、夕飯を食いながらでもいい」
「へええ」
「なんだ?」
「今のそれ、デートの誘いですか」
「まあ……そんなようなもんだ」
「柚木さん、いつもそういうふうに、デートへ誘うの」
「いつもこういうふうに誘って、いつもOKしてもらえる」
元刑事でフリーライターの柚木草平は、月刊誌への寄稿の傍ら、警察から”見放された”被害者から依頼も受ける私立探偵である。今回は女子大生の轢き逃げ事件の依頼が持ち込まれたが、調査を始めた途端に更なる事件が発生して……。調査で出会う女性はみな美女ばかりで、事件と共に柚木を深く悩ませる――柚木草平シリーズ第1弾。
面白かった。
含みを持たせた会話の応酬を繰り広げるのって、二人とも頭良くないと無理だよなぁ……とか、主人公モテすぎだろとか。その辺りは、大矢博子の解説で、
「歯を磨いてきて正解だった」
「なんのこと?」
「君みたいに奇麗な子とこんな近くで話ができるとは、思わなかった」 (本書42頁)
うわ――――。初対面の女にこんなこと言うか普通! それも、この台詞の真意は、話に熱中して思わず身を乗り出した女性に、顔が接近し過ぎていることを教えるためなのよ。「顔、近いよ」 でいいじゃん、ねえ? つか、何も言わずに自分がちょっと下がればいいだけじゃん。なのに柚木草平って男は、こゆことをさらっと言っちゃうのだ。
とかが的確。確かに魅力的な主人公だった。
というか、もう見てしまったから仕方ないけど、解説とかは感想を書く前に読むもんじゃあなかった。次作以降のある程度のネタバレがあったりとか、読んで感じたモヤモヤしたものをすっきり言い表してくれてるとかで、刷り込みというか、上書きされてしまう。
力関係が完全に「娘>主人公」 だったりとかで、次作以降もその辺のかっこ良いかっこ悪さみたいなものには期待できそう。
余談。
16年前の本の復刊だそうで……って16年前!? と思わず思った(?)。あとタイトルの"彼女"って、そのまま考えれば”夏原祐子”*1だと思うんだけど、もっと別の意味もありそう。
*1:途中から下の名前で呼び始めるのには笑った。