ぐるぐるまわるすべり台

ぐるぐるまわるすべり台 (文春文庫)

ぐるぐるまわるすべり台 (文春文庫)

読了。

「じゃあですね、僕はかざしますよ。手のひらを太陽に」
僕は想像した。立ち位置右の男が球根を植え、左の男は口笛を吹く。後ろの男はドラムを叩き、中央の男は手のひらを太陽にかざす。
「だめでしたか?」 と、中浜さんは言った。
「いや、全然だめじゃないです。完璧です」

僕は大学を辞め、塾講師をする傍ら、バンドのメンバーを募集した。<熱くてクール、馬鹿でクレバー、最高にして最低なメンバーを大募集> そんなうたい文句に集まったロックな面々。ボーカル志望の中浜に自らの分身を見た瞬間、僕の中で新たな物語が始まった。


なかなか良かった。
「ぐるぐるまわるすべり台」 を読んで、微妙に伝わってこないな……とか思ってたけど、カップリングの「月に吠える」 が割と分かりやすくて、芋づるな感じで「すべり台」 も良いかも、って思い始めた。なんというか、前を向いて道を信じてひたすらに突き進む! みたいな万能感に近い気持ちとエネルギーが生まれてくる感じが。
印象に残ってるのは、リセットする瞬間のクリアな感じとか教室長の超然した勢いとか、初対面の奴と即興で盛り上げた会話が女性に受けなくて「反省会が必要だな」「おう」 っていう出会いをした友人とか。


読み終わった後にヘルター・スケルターを聴いてみて、なるほどこういう感じかと。


余談。
発刊順に読もうと思ってて、「リレキショ」 が1st「夏休み」 が2nd「すべり台」 が3rdで、でも発刊順は夏休みとすべり台が逆になってて、そういうもんかなー、とか思ってたら実際は単行本では順番どおりに発売してた。ちょっとがっくり。