夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

読了。

私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」 という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ! 先輩、奇遇ですねえ!」

青春らしさをもってして妄想を膨らます私と、子供らしさをもってして好奇心と優しさを振りまく彼女とで、交互に一人称でたどる青春物語。


いや楽しかった。
特に第3話の文化祭が……というかそこがピークだったかな。屋上に上がった辺りはもう、読み進む手が止まらない止まらない。でもそのあとは予定調和というか、語り口からして今現在の関係が窺い知れるわけで、第4話でどう軟着陸するのか、という肝心の場面が、何やら狐に摘ままれたような収束の仕方だったので、どうにもすっきりしなかったのが残念。
まあ、全編通して存在するふざけた表現というか、珍妙な語り口みたいなのは、いつも通り面白かったけど。これはもうこの作者特有のもので、今更どうこう言うものでもないか。


むしろこの後に「四畳半神話大系」 を読むといっそう面白いかも……。映画で一人泣いてた女の子とか。