葉桜の季節に君を想うということ

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

読了。タイトル買い。

「酔った女を一人で帰すわけにはいかない」
「タクシーに乗っていれば一人でも安全です。だいいち酔うほど飲んでません」
「家まで送り届けるのが紳士のたしなみだ」
「紳士は夜遅くに女性の家を訪ねません」
「お嬢さん、自意識過剰ではないですか。家の前まで送るだけですよ」
「ま!」

「何でもやってやろう屋」 を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、悪質商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしていた麻宮さくらと運命の出会いを果たして――。


やっべ、面白すぎる。
いわゆる探偵小説であり、極道にスパイとして潜入したり人を捜したりする。それと同時に青春小説でもあったりして、セックスばかりで心の繋がりを感じられない主人公が、運命の出会いを……みたいに並行して複数の物語が描かれる。ハードボイルドとまではいかないけど、まあ「女にだらしなくて弁が立つ探偵」 という類型に入ると思う。
裏表紙のあらすじには、「あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作」 とある。でも実際読んでて、『面白いことは面白いけれど、上記の類型としての面白さであって、ミステリーって言うほどのことか……?』 とか思ってたら。思ってた! ら! そういうことかあああああっ! こりゃすごい。ある瞬間から、セーターのほつれのようにするするっと分解されていく様は見事としか言いようがない。


種明かしの怒涛の勢いからタイトルに繋げるラストが、非常にすっきりとした一冊。やはりタイトルが良い本はハズレがないね!