青春俳句講座 初桜

青春俳句講座 初桜

青春俳句講座 初桜

読了。図書館シリーズ*1

「勘さんと僕で荒町の病院に駆けつけた。そのとき、保育器に今日生まれたばかりの赤ちゃんが並ぶ新生児室の硝子の前で、東野先生がぼそっと呟かれた言葉をいまでも憶えている」
ああ、ここにいる子供達すべての年齢を合せてもぼくの齢には達しないんだなあ。
「これだ、と思った。これが俳句なんだと思った。十七歳の初秋、僕は悟ったんだ」

わずか十七音の日本語で、季節や青春を切り取って見せる文芸――それが俳句という詩である。高校生である水原さとみは、俳人である花鳥先生に師事を請う六人の内の一人である。


あああ、これは良い……。*2
一応は<日常の謎> 系のミステリかな。でも実際はむしろ、ミステリをして俳句のことを知らしめる内容。「俳句とは何か」 「俳句と挨拶の関係とは」「日本人が季節感を失いかけている、とは」 ……これらを語る主宰こと花鳥先生の話は、何気なく見過ごしている日常に意味を見出すことの妙味を味わわせてくれます。
中編が三話入ってるんですが、やっぱり一番好きなのは一話の「桜」 かな。「隣の教室からカンニングすることは可能でしょうか?」 から始まる俳話と謎、そしてその結末の綺麗なことといったら――。いやもう素晴らしかった。
最後に自分なりの各話の俳句の解釈を。一話「桜」桜を根元から見上げた空の水色と桜の白色の対比させた風景で、意味としては、「小説」 でも「句集」 でも、夢/余白はまだまだこれからだ、みたいな……”。二話「菫」”まあ貰ったのは鉢1つ分だから分けられないとして、意味としては、やっぱり直前にある《二人の》 夢が不可分ってことだよね”。三話「雛祭」”父が風呂で「いい湯だな」 を歌ってると思われます。意味としては、事態も丸く収まって父も風呂に入りつつ上機嫌、ということかな……”。


付箋を剥がしたくない一心で図書館に返す前に買ってしまうかも。……とりあえず、次巻が出たら文庫化を待たずに買おうかな。




余談。
表紙絵、見たことあるな……と思ったら、中村航の本の表紙を軒並み描いてる人だった。
メモ(付箋)。
p36,p55,p132.p155,p230

*1:久々に図書館に行ってみたらずっと(古本屋で) 探してたハードカバーが色々あって内心で狂喜乱舞しつつ借りてきたよシリーズ。

*2:1冊目にして買いたくなってきた。文庫落ちを待ってもいいけど、たぶん春夏秋冬シリーズだろうしなあ……。まあとりあえずそれは置いといて。