ジョン平と僕と3 ジョン平とぼくらの世界

読了。

あれはぼくが、中学生くらいのときだったと思う。自分の魔法の能力に絶望して、数学と、物理学と、化学と、ぼくは計算して、考えて、橋をかけて、そうやって生きてゆこうと決意した夜。ぼくはジョン平の頭を撫でて、かれに謝ったのだった。馴致が進まないジョン平に、ぼくの怠慢を。馴致が進まなければ、普通の犬と同じ寿命しか与えられることのないジョン平に、心から謝って。
しかし、そうだ。
ジョン平とぼくは、それでも一緒にやってきた。

高校三年生の新学期。入学してきた一年生の中に、重は三葉とそっくりな顔を見つける。なぜ、旅に出たはずじゃ――そうでなくて、そう、つまり、彼女はオーランジュの主人で、三葉のモデルとなった城塚さやではないのか。


3巻で一区切り*1ということで、締めくくりに相応しい面白さ。
どうやら、もともと三部作というか、1巻ブラウ2巻ロオトと来て、3巻にしてグリューンとヴァイスというのはきっちり決まってたっぽい。それだから3巻まで出せたのかも。邪推だけど、実際売れてるとは言えないっぽいのが辛いところ。
ただ私は、「魔法に関して無力な主人公が、科学をどうにか駆使して事態に立ち向かう」 という、逆境を跳ね除ける物語とまではいかないけど、弱者が隙間を縫ってぬってして一矢報いる話は大好きなので、やっぱり続けてほしいかな。
70頁「たゆまぬうろうろのたまもの」 とか、146頁「ろくでなしー。なしー」 とかのセンスは好き。何故か笑ってしまった。そして212頁「――鈴音と」 はまさに強烈の一言。いやあ、まあ、そうだよなあ……。そんな単純に割り切れるもんじゃないよなあ……。


短編集が出るかどうかには不安が残るけど、座して待つのみか……。別シリーズも何か書けそうにない気がするし。想像だけど。はてはてなんじゃろかいな。



余談。
時速の計算で、二を掛けるのは何でだろう。J = kg *m*m/s*s を m/s に直すには kg で割って平方根取ればいいだけだと思うんだけど……。

*1:短編も出せたら、とは言ってるけど……まあとにかく、本編はもう無理ってことだろうなあ。残念。作者自身のテキストはWeb で読めるから別にいいんですが。