少し変わった子あります Eccentric persons are in stock

少し変わった子あります

少し変わった子あります

読了。図書館シリーズ3。

「気にすることはないさ。やる気なんてものは、誠実な仕事には全く邪魔な存在だよ」 私は言った。「どんなにやる気があったって、人間は数メートルしかジャンプできない。人を月まで送ったのは、そんな単純でいい加減な意志ではなかったはずだ」

短いフレーズではとても形容できない。その店に名前はなく、店を開く場所も毎回変わる。ある時は潰れた元料理店であったり、またある時は単なる民家であったり、またある時は何の変哲もないビルの地下であったりする。
その店でサーブされるのは、和洋中の高級料理であり、そして――少し変わった子。


いや、面白かった。
最後の章でやっと気づいた。いやまさか、森博嗣がこのまま終わるとは……なんて思ってたけど*1。やっぱりそんな展開か!
そこは、料理とともに若い女性が部屋に入ってきて一緒に料理を食べる、という店である。しかし何をするでもなく、一切話をしない女性もいれば、身の上話をひたすら聞かせる女性もいる。また女性と会えるのは一度きりであり、名前その他の情報は一切知らされない。そして次に訪れた時はまた別の女性が出てくる……というような話。主人公は、毎回サーブされる女性の持つ何かしらの魅力や効果、いわゆるスペシャリティを求めて度々足を運ぶことになります。
で、最後のオチを考えてみると……現実的な着地点としては、126頁「私は、自分の中に小さな狂気を発見した気がした」 や、また184頁「自分が少し若返ったように感じた」 から、この店は訪れる人に”何らかの変化をもたらし、日常から解脱させる” 効果があるかと思われます。その結果があんなことに……。多分ですけどね。まさか”殺されて料理になる” ってわけでもないだろうし。
また最終章「少し変わった子終わりました」 とは、”磯部で連鎖が断ち切られた” ということであり、つまり店に来ることが出来るのは一シーズンで一人ずつ……とか。こっちは完全に想像ですが。


どの女性も感動的なほど上品な食べ方をする、というのを見てみたい……というよりむしろ、それで魅力が醸し出せるならその食べ方を教わりたいな。


私的メモ(付箋)。
p41,p162,p192

*1:たまに終わったりするから侮れない。