枯葉色グッドバイ

枯葉色グッドバイ (文春文庫)

枯葉色グッドバイ (文春文庫)

読了。

「あっちはただの仕事、でもあたしには、家族のことだよ」
「ただの仕事と割り切らなければ殺人事件は扱えない。熱い鍋を掴むには鍋掴みが必要だ。素手で掴んだほうが鍋の暑さは分かるが、それでは火傷してしまう。被害者側からは素手で鍋を掴めと強要され、犯人側からは余計なことをすると恨まれ、警官なんて、損な商売さ」

元刑事の椎葉明郎は、女性刑事の吹石夕子に頼まれて、日当二千円で一家惨殺事件の推理に乗り出す。当初は気乗りしなかった椎葉だったが、次第に事件に深入りすることになってしまう。元刑事・現ホームレスの探偵小説。


面白かった。長いけど。500ページて。
しかしそれだけに最後の解決編、というか、謎の正体を見極めた辺りは加速・収束感がたまらない。元警官で離婚済みの探偵、というのは柚木草平シリーズの柚木と同じだけど、「棄てるべきプライドを捨てている」 という辺りからして、自分の欲に消極的。それでもモテるんだけど! 終盤の”夕子の、嫉妬を”自覚してる行動が楽しい。
ミステリとしては順当な感じ。使ってない伏線ってアレくらいだよなー、とか思ってたらそのままドンピシャだったり。やっぱり自力で答えを出すのは難しい。……というか長かったから、手を止めて考えるなんてことしなかったけど。


裏表紙には「ハートウォーミングな長編ミステリ」 とあるけど、まあ害のない説明だと思います。