骸の爪

骸の爪

骸の爪

読了。

私は感じていた。眠りに身をゆだねつつある私の、すぐそばに、何かがいた。
朧な意識の中で、私は認識していた。それは、じっと私の顔を覗き込んでいた。
誰がいる。
何がいる。

ホラー小説作家の私は、ある仏所に泊りがけで見学に行くことにした。仏像を彫り、各所に納品するその場所は、どうやら何がしかの因縁があるようだった。二十年前の失踪。そして私が訪れた翌朝、工房の仏師がまた一人いなくなっていた……。


……うは、面白かった。
ホラー小説か、”と思わせきやミステリ” だったり、私小説のごとき一人称だったりで、最初の方で混乱はしたものの、最後の、怒涛の展開には脱帽。なんかもうバファリンの半分は伏線で出来ておりますみたいな。いやー、読む手が止まらなくて、就寝前に無理して読みきったもんだから、頭が痛い痛い。
あの青年が二十歳くらいだよな” とか思ってた所を見事につっつかれたり、”鎌で木は切れないだろ。太すぎて。” とか頭をよぎった引っかかりを、やっぱり見事につっつかれたり。後者の、どんどんと真相が明らかになって、ふう、と一息ついたところでのトドメの一刺しは、なんかもう的確に溜息スイッチを押してくれやがりました。うはあ。


惜しむらくはシリーズ第2弾だったこと。きっと1巻を読んで2巻を読んだら再発見があるんだろうなあ……。それはそれでポジティブに考えれば良いのか。