空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction

空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫)

空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫)

読了。タイトル買い。「葉桜の季節に君を想うということ」 もそうだったけど、単純にこういう長い文節のタイトルが好きなだけかも。サブタイはパルプ・フィクションからかな。

「いいかい、これは俺のお金だ。俺はここで働いてその分だけお金を貰っている。そのお金をキョウくんにあげるんだ。それはキョウくんが良い事をしたからだ。でも良い事をしたからって、いつでもこうやってお金が貰えるなんて思ったらダメだぞ? お金は、働いて貰うものなんだ。ただで貰ったお金なんて、それはお金じゃない」

二十年ぶりに兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く <サクラバ> や六角交番、タンカス山など、あの古い時代の町で起こった不思議な事件を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作!


あはははは! 大笑いしてしまった。
何故かって、最初の5ページで「これは絶対に面白い!」 と思ったから。絶対に、ですよ。「面白そう」 「面白いかも?」 と思うことは数あれど、「絶対に面白い」 と、ここまで確信を持って思えたのは初めての体験*1。いやもう、この『予感』 を味わえただけで値段分の価値はあったかな。
しかしまあ、「こんな感じで面白そう」 という予想は見事に外れてしまいました。面白かったことは面白かったんですが、最初の5ページで感じた面白さじゃなかった。そこはちょっと残念だったかな。文句を言える事でもないけど。





というわけで、いつもの形式で感想。面白かった。
少年時代の回想で「あの頃は〜〜だったよな」 というのが前半で、郷愁を漂わせつつも、展開が進むに連れて得体の知れない謎が出てくる、後半のサスペンスのドキドキ感、という展開でした。
しかしあれですね。前回読んだ小路幸也の本は「HEART BEAT」 でしたが、その時の雲上四季さんの感想

ハーートビーーーート!!

あたりの影響か、どうにもこの本の語り口が、荒木飛呂彦の過去の回想*2と似ているのかも、と思えて仕方がありませんでした。特に、サスペンスが最高潮の252頁「でも、たった一箇所だけ、僕の意思とは無関係に動き出したところがあったんだ」 あたり*3の逆転劇は実に小気味良いものがありました。


なんというか、まだ2作しか読んでないにも関わらず、この作者から鉄板の香りが漂ってきます。次はどれを読もうかな。



(とりあえず「続きを読む」 記法で隠してみます)





ちょっと、あの、勢いでやってしまって、意外と5ページというのは長いんだなあ、タイプで写すのも大変だったのに、物書きってのは大変だなあ、と申し訳なく思いつつ、ここに載せてみます。
私と同じ体験をしてくれる人がいるでしょうか。

※削除しました

一人でもいてくれれば幸いです。

*1:もしかしたら過去にもあったかもしれないけど、ここまで大笑いするほどってのは確実に初体験。(ちなみに家で一人読んでました)

*2:例えばジョルノがギャング・スターに憧れる理由を語る少年時代だとか。

*3:これはミスタの回想、「冷静に弾を込め直し 看護婦が静脈に注射を打つように」 の感じかな。あるいはエンポリオの自動・ウェザー・リポート