ミステリクロノ

ミステリクロノ (電撃文庫)

ミステリクロノ (電撃文庫)

読了。

「ああ……もどかしいわ。今のわたしの驚きを表現する語彙が、手持ちのそれではあまりに足りないことが」
「大丈夫だよ。その倒置法と指示代名詞を用いた煩雑で面倒な構文を会話で使うあたり、君が常の心境でないことは充分わかる」
「ありがとう。そう言ってくれるのはあなただけよ、遥海くん」
「どういたしまして」

「私は……天使だ」 そう言って現われた少女は、その手に、まさにその言葉の証明足りうるものを持っていた。クロノグラフ 「リザレクター」 。外見が注射器をしているそれは、生き物の時間を”巻き戻す” 。疲労も怪我も空腹も、記憶でさえも……このクロノグラフの前では灰燼と化す。


うん、面白いかな。
ただミステリというよりは、むしろサスペンスとしてだけど。いやあ、謎というには犯人の可能性がある人の範囲が狭くて、「理詰めで考えていけばすぐに犯人に思い当たりそう」 *1という感じがしたのと、(ミステリとしての) 最後のピースが「そうかぁ〜?」 と疑いたくなるような理由だったので*2
でもそれ以外、つまりミステリ以外は、結構面白かったです。頭脳が0歳児の美少女の教育、高校生になって発覚する幼馴染の関係、クロノグラフという反則――。最後のは、なんというか、絶対に1回は悲劇が待ってるよね……とか思ったところで、”悪魔のミカタ1巻” を思い出しました。そちらでは、続刊であっちの方向へ突っ切っていってしまったわけですが、この本では、そこへ至るまでの過程を丁寧に書き出してくれそうです。


前作「トリックスターズ」 に手を出すには、まだ尚早かな……。続刊に期待。

*1:もちろん考えてないので、負け惜しみといえばそれまでですが。

*2:「”私なら” 紐も元に戻している」 から。これは単純に感覚的な理由からですが、一般的に考えても、発覚を遅らせるために元に戻す可能性もあるでしょう。……まあ、私の考える「一般的」 ですけど。