コッペリア

コッペリア (講談社文庫)

コッペリア (講談社文庫)

読了。

「人形がお好きなんですね」 私は店の中を見回して言った。
「人形だったらなんでもいいってわけじゃない。相手によるさ……」 店主は無愛想に言った。
「あんたは人間が好きかね?」
私は少し考え、それから肩をすぼめた。
「そうね、相手によるわ」

恋をした相手は人形だった。だが、人形はエキセントリックな天才作家の手で、目の前でバラバラに破壊されてしまう。それでも諦めきれず、破片を持ち帰り修復を進める僕の目の前に、人形に生き写しの女優・聖が現れて――。


お、面白かった、けど?
第一章〜第三章+エピローグがあるんですが、物語としては同じ話なんだけど、エピローグに至るまでとエピローグ自体の毛色が全く違うというか、端的に表すと「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ! 『俺はミステリを読んでいたと思ったら、いつの間にかラブストーリーになっていた』」 ……あ、いや、すいません、初っ端から「恋をした相手は〜」 とか言ってますね。でも、そんなのおくびにも出さない感じだったんですよ! ……これが「わかってない」 ということなら、否定の言葉もありませんが。
しかしまあ、ミステリ一辺倒で物語として微妙、みたいなのよりはずっとスッキリした終わり方ではありますが。98頁「彼はひどく浮き上がって見える」 とか深読みすればそういう意味に見えますし、178頁「いくら……だれがあんたなんかと」 は実際にそういう意味だと言及されてますが、普通に読んでてそれに思い当たる人は凄すぎると思います。


そしてミステリとしても上々であれば文句の言い様もありません。喫茶店のおっさんはMVP。