インシテミル

インシテミル

インシテミル

読了。「イン(=Log in) してみる」 かと思ってましたが、「THE INCITE MILL」 でしたね。

「おれが毒を入れないか、見張りに来たのか」
関水は、迷わず答えた。
「そうよ」
「じゃあ、コップを運ぶのを手伝ってくれ」
「なんでよ」

1120百円――冗談のような時給の求人広告に、結城理久彦は応募をしてしまった。誤植だとしても時給1120円は魅力的だから……だが、待っていたのは完全隔離された『暗鬼館』 での殺人ゲームだった! 閉鎖環境ミステリ。


うん、面白かった。
ただ、もっとちゃんとミステリとして<解決> に頭を巡らせてた方が楽しめたかな、とは少しだけ思いますが。半分寝てるまま読み進めたので、その辺はずいぶんと曖昧に捨て置いたままでした。
まあそんな部分を抜きにしても、『暗鬼館』 における<夜> も眠れぬ緊張感とか、後半の”<監獄>” での異常なほどの安堵感、それに次ぐラストへの疾走感などは非常に楽しめるものでした。
参加者には古今東西のミステリに出てくる凶器が与えられて、それがまあこの舞台の要なわけですが、それらの元ネタとなった小説を読んでいればより楽しめたかもしれません。私は「まだらの紐」 を名前だけ知ってるようなくらいでしたが……。


ポップな表紙とは裏腹に、中身は真っ向からの真剣勝負なミステリ。いちおう単発作品で、ラストの”手紙は気味の悪い演出” ってだけだと思うんですが、そのままの意味で捉えたら次があるかも……? その時はもっとどっしり構えて読みたいですね。




余談。
444頁「一振りのナイフを手に」 は、”クラブでやったように自殺するため?” とか思いましたが、同じページに「生存のための場所だった」 とか書いてありますし、結局どういう意味かな……と考えたところで、後者は過去形の話ですから、やっぱ前者でしょうか。
……とまあ、考えたのはこのくらいです。