東京公園
- 作者: 小路幸也
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/10/28
- メディア: 単行本
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「そのうちに圭司くんがここでバイトをするようになった。カウンターのこっちとそっちで会話をする君たちを見ていて、いつも願っていたよ」
「願っていた?」
マスターはシングルのグラスにストレートでウィスキーを入れて、僕にもくれた。二人でそれを飲んだ。いつも仕事の終わりに一杯だけのファーストラストショット。
「この二人に、神の祝福あれ、と」
家族の写真を趣味として撮っている僕は、とある依頼――自分の妻と娘がいつも公園に行くが、その写真を撮ってくれ――を受けることになった。ところが、それを何度も繰り返したある日……振り向いた彼女の視線が僕に向き、あろうことか僕に笑いかけ、そして何事もなかったかのように散歩を続けるのだった。
堪能。ああもうこの作者大好き。
東京中の公園を回りながら、何日も何日もとある女性を撮影している内に……というような話と、主人公の周囲に起こる色々な話の二つですね。メインは前者ですが、後者も色々とゴタゴタしていきます。そして両者に決着を……というラストなんですが、爽やかすぎる決断に泣いた。何でしょう……理由はよくわからないんですが。あまりに綺麗な答えだったから?
あとあまり関係ないですが、ヒロの過去話でさだまさしの「償い」 が浮かんできて無条件に涙目になったりとか。それと、前に読んだ本でジョジョの話をしたけど、今回はそのまんま現物が出てきて笑ったりとか。もう何か私の中では、小路幸也→ジョジョ、という回路が出来上がっている気がします。
もう何だろう、この作者の文章は、特に熱い台詞でも泣ける台詞でもないんだけど、読んでるだけでどこか琴線に触れますね。ぴったり填まってる感じです。次は東京バンドワゴンを借りてこよう。
私的メモ(付箋)。
p35,p55,p92,p175,p180,p222