有頂天家族

有頂天家族

有頂天家族

読了。

「俺はこのごろ、兄さんがつくづく可哀想になるんだ。偉大なる親父の跡目を継いで真面目に踏ん張っているのに、弟たちが蛙と阿呆と坊やだからな。屁の役にも立たん」
「反論できない。するつもりもない」
「長子でなくてよかったよ」
次兄は大きく溜息をついた。
「もし俺が兄さんの立場だったら、蛙になって井戸に籠もっちゃうね」

偉大なる父。優しい母。かけがえのない兄と弟。こんなファミリーがまだ日本にもあった――。ただしこれ「狸」 の話。かくも毛深き家族愛!


最っ高。
もう凄すぎる。この作者ではこれが一番好き。「これも阿呆の血のしからしむるところ」 というような阿呆騒ぎに笑ったり、亡くなった父に母の愛、阿呆の血を恥じることなく誇るべくして誇る四兄弟に、なんとも涙が滲んできたり……。なんといっても母がすごく良い! 父の死に嘆き悲しむ子供たちに、一喝する母の言葉がもう、思い出しただけでも泣けてきます。
どうも連載小説だったようで、第一章〜第五章までは中篇のような話になってますが、書き下ろしっぽい第六章と第七章では、前半で窮地に陥る彼らと、後半の三つ巴で怒涛の展開が、もう電車の中で読み進む手の、止まらないこと止まらないこと! そして涙も止まりませんでした。313頁「父上はあの夜、俺にそう言ったのだ」 に始まり、338頁「しかし、喰うに喰えないのも愛なのだ!」 の詭弁、342頁「おまえらひとり残らず身の程を知れ!」 の決め台詞、そして347頁「お久しぶりです、母上」 で締め……。『感極まった末の涙』 ここに極まれり、みたいな。もう最高。


読む前に一番後ろの「有頂天家族 第二部 始動!」 というのを目にして「おいおい……」 とか思ったものですが、今やもう、楽しみで楽しみで仕方ありません。超期待。




追記。
作者のダイアリに登場人物紹介が載っています。これをどこかしら面白いと感じたなら、買ってみてもいいかも。