さよならピアノソナタ
- 作者: 杉井光,植田亮
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
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ここに、真冬がいれば。
あのギターサウンドが、ここにあれば――
ぼくは自分のベースのネックを握りしめる。そのためにこの音を創ったんだ。やっとわかった。言い訳じゃない、ほんとうの理由。真冬に、この熱を伝えるため。
ジャンクヤードのくぼみで見つけたのは、元・天才少女ピアニストの独奏だった。「全部忘れて」 と言って姿を消した彼女だが、1ヵ月後に同じ学校の同じクラスに転入してきた。何も関わるまいと誓った主人公だが、少女は思わぬ方向から主人公の生活に踏み込んできて――。
面白かった。
眠気をおして2時間も読み耽ってました。私はクラシックからロックから音楽のことは何でもござれ、というのとは全く逆で、さっぱり分からないんですが、そこはそれ、詳しい所はそれっぽく読み飛ばしてても十分楽しめました。
作者のブログ(→Nothing but Electric Empty Text) を読んでて*1慣れてたのか、文章がスルスルと頭の中に入ってきて、実に夢中になりました。蚊が飛んできたので一瞬腰を浮かして臨戦態勢に入りかけましたが、すぐに読書態勢に戻ったくらいです。いやあ、こういう、物語にのめり込む瞬間のために本を読んでいると言っても過言ではありませんね。楽しかった。
そろそろ紹介。ニート探偵*2より、だいぶブラックさが減ってコメディ寄りですが、相変わらず無気力系のインドア主人公です。あと天才転校生少女と9年間同じクラスの腐れ縁幼馴染とネジが一本飛んでるスーパー高校生な先輩、とテンプレから外れない程度のキャラで良いですね。先輩があまりにスーパーすぎるのがちょっとアレですが。
基本的にコメディな部分がいちいち面白いのですが、79頁「Roll over Beethoven」 とか、201頁「まさに、きみが蛯沢真冬を打ち負かすためにあるような曲なんだ」 で燃えまくりな部分もあって、終盤”ジャンクヤードに戻ってきた” 辺りではもう感情移入の度合いが半端じゃなかったですよ。素晴らしい。
あと”廃品回収” の話が出てきたあたりで、都合よくあそこに直行するのかと思いきや、わりと現実的な手段から繋がっていったところも面白かったですね。たしか”「半分の月がのぼる空」” のドラマCD書き下ろし分ではほぼ直通だったので、そのイメージが頭にあったからかも。
タイトルのわりにはロックな話だった*3ので、何でこのタイトル? とか思ってたんですが、その辺も綺麗に纏まりましたね。
……なんかもう色々書きましたが、要約すると「すげぇ面白かった」 の一言ですよ?
追記。
作者のブログで曲目の解説を載せています。(→Nothing but Electric Empty Text:さよならピアノソナタ・曲目紹介) これから読む人は、
本編と合わせて、曲が出てきたらこっちを確認する、みたいなめんどくさいやり方が推奨使用法です。
ということらしいですよ。