優しい煉獄
- 作者: 森岡浩之,山本ヤマト
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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「いいや、そんなことはない」 彼はにべもなく、「ごっこ遊びのつもりだから、そんなにふんにゃりしているんだ」
「なんだよ、ふんにゃりって」
「びしっとしてないってことだ」
「同じぐらいわからないぜ」
「マスター、このコーヒー、冷めているよ」「お客さん、今朝からコーヒーは冷めるようになったんですよ」 ――この世界、リアルを追求していくと不便になるのだ。そう、ここは仮想現実……ただし、現世で死んだ人間の脳から人格を取り出して保持している。つまり――死後の世界という奴だ。
なかなか面白かった。
ハードボイルド探偵物っぽい、という表紙からの判断しか情報がなかったんですが、中身はとんだSF物でした。よくこんなことを考えつくなあ、というのは、解説で言われてた有名どころっぽいSFを読んだことがない人の感想ですが。
面白いのが、アップデートが行われて現実に近付く度に”不便” になっていくこととか、利用料を払っていないと人格が削除される、まさに金=命な世界観とかですね。そんな仮想世界の中で、まあ死んでるわけですが、人々が実に生き生きと生活してます。この辺りの描写はしっかりしてて好きですね。
でもハードボイルドと言われると、ちょっと違うかなあ、と思います。私の中のハードボイルドのイメージとですけど。なんというか、もっとこう、決める時はビシッと決めるぜ! 皮肉も相手構わず言いまくるぜ! っていうイメージですよ。この本の主人公はそうじゃなくて、そう、まさに「ふんにゃり」 してる感じ*1。その辺、ドップラー効果のくだりは面白かったです。
続きが来年早々あたりにトクマノベルズEdge で刊行されそう、と予告(予想?) されてますが、どうしようかな。サイズ違いますよね。
*1:もっとハードボイルドにいきたいのだ、みたいなことは言ってるので、ハードボイルドではないと自覚はしてるようには思いますけど。