EDGE 2 3月の誘拐者

読了。

「宗、ひとの言うことを聞いて――」
「やりなおせばいいじゃないか」
畳みかけるように、宗一郎が言った。怒った顔をしている。相変わらず、雨にも濡れない顔が、少し、泣きそうにも見えた。
「こんなところで自分を責めてないで、あの男を止めればいいじゃないか。あの子にまかせてないで、錬摩が行って、あいつのくびきになってあげればいいじゃないか!」

死にどうしようもなく惹かれ、そんな自分を恐れてもいる青年。両親の無理解や己の無力さに憤る7歳の少女。二人は出会い、手に手を取って歩き出した――それが前代未聞の「幼女誘拐事件」 への入り口だとも知らずに。


かなり面白かった。
今回も犯人側の視点とプロファイラー側の視点が交互に描かれるんですが、犯人側(青年と少女) の話が切なすぎて泣けてきます。もうね、犯人って書いてますがね、実際そんなイメージじゃないんですよ。優しいおにいちゃんなんですよ! (※これをストックホルム症候群と言います)
死を恐れつつも、忌避しようとはせずに死を覗き込もうとする青年。一般人になろうとしてもなりきれず、殺人の衝動を必死に押し隠しているが、やがて精神の均衡が崩れかけて……という話。しかし殺人の衝動を抱えながら近付いた少女に、逆に精神を支えられてしまいます。一般人にも殺人者にもなりきれず、片足を奈落に浮かべた状態の青年は……という、その時の心情がもうドキドキ。まさに EDGE <境界> ですよ。
そしてラスト。276頁「……遠いよ。遠すぎるよ」 〜 「男の心にも、同じように焼き付いていればいい、とハルカは願った」 と、281頁「もう、大丈夫だ。きみは自分を誇っていい。また転げ落ちそうになったら、今日のこの朝を思い出せ*1 …… こ れ は 泣 く 。


3巻売ってるのかな? ……と、作者サイトをのぞいたら、白紙状態ですか。続刊はX文庫で買えと……抵抗が(笑) しかし買ってきますよ5巻まで! いつ買うか分かりませんけど!

*1:全然関係ないけど、KOF八神庵「月を見るたび思い出せ!」 の決め台詞が浮かんできます。