青春時計

青春時計 (富士見ミステリー文庫)

青春時計 (富士見ミステリー文庫)

読了。

「なんで?」
「だって……こんなこと、慧さんと会わなかったら絶対にやってなかったよ。こういう作業が楽しいってことも気づかなかっただろうし、そもそもここへのぼることもなかった。たぶん、一生なかったよ」
「そうだな」

聖司と駿介は春休みの学校で、一人の少女と出会う。少女・慧は春休みが終われば留学する予定であり、その前に思い出の時計塔を見にきたと語る。聖司と駿介は「慧が旅立つ前に時計塔を修理しよう」と計画するが……。


それなりに面白かったかな。
3人の視点(作者) によって同じ出来事が描かれて、色々な側面が見え出す……という仕掛けなんだけど、その点についてはどうとも思わなかった。それよりも、一人目である聖司の描写がどうも怪しく思えてしまって、三人目である慧の視点で「弟ができたような」 と明言されるまで、ずっと聖司が女性じゃないかと疑ってた。だって一人称が「ボク」 だったし…………って、あれ?
というわけで、そういう仕掛けがあるんじゃないかと疑ってかかってると、三人の人物が秘めている様々な思惑――といった箇所は全く気にならなかった。ただまあ、(良い意味で) 各人が青春してるなあ……とは思ったけれど。


各編に漂う青春っぽさは良かったとしても、総括した印象としては、あまりパッとしなかった、というのが正直なところ。ただ最後の詩だけは不覚にも感動。これは森橋ビンゴなのかな。