もえない Incombustibles

もえない―Incombustibles

もえない―Incombustibles

読了。なんという萌え表紙。

「こんな金持ちと友達になりたいなあ。一度でいいから、パーティとかに呼んでもらいたいよなあ」
「ああ、お前なら、なんとかなるんじゃないか」 僕は正直に言ってやった。
「それ、どういう意味だよ」
「でも、何を着ていこうか、考えただろ?」
「考えるか、そんなもの」 姫野は笑う。「まあ、まずは、仮面をして……」

クラスメイトが死に、僕の名前が掘り込まれた金属プレートが出てきた。その謎を探って行くうちに、僕はとある豪邸の温室に行き着いた。そこの花には、同じ金属プレートが挿さっていて――。


雰囲気を楽しめばいいんじゃないかな。
正直なところ、どこが面白かったかも分からないけれど、まあ、読んでるあいだは楽しかったかな。つまりは、いつも通りの森博嗣、といった感じ。特に最近出した本は似たような印象が多いと思う。読んでいてクスリと笑う会話があれば、改行を多用したスリルでショックなサスペンスっていう場面もあったり。
前者は、24頁「ものにする? 嫌らしい響きだな、それ」 とか、45頁「お前さ、小説家になれよ」 とか、67頁「うん、お前の指はゾンビか、とかって」 とか……。後者は、231頁「じゅんちゃんのために戦えなかったことが、情けなかった。恥ずかしかった。その思いこそ、今まで僕を眠らせていたもの」 あたりなんかは、森博嗣にしては珍しい、熱い文章だったと思います。


かなりの萌え表紙なのに、本を開くとダークな扉絵だったりして、どっちなの? と思わず笑ってしまったけど、今にしてみると、なんとなく、どちらもイメージとしては間違ってないような気もします。後付けの感覚かもしれないけど。




余談。
「少年小説」 だとか「ビルドゥングスロマン」 だとか「青春ミステリ」 だとか、紹介文を書く人も手を焼いているんだなあ、としみじみ。


余談2。
257頁「杉山が死んだことで、責任を感じたのかもしれない」 という台詞がありますが、序盤の方には、”山岸小夜子が死んだのは3ヶ月前で、杉山友也が死んだのはつい先日” とあるので、この台詞は変です。ただ、いつかの MLA で、「○○という人物が××と言っていますが、これは間違っています」 という問いに対して「それはその人物が間違えて覚えていたのでしょう」 と答えてたのと、同じ理屈でしょうか。うーん。


追記。

名称を決めることはそれくらい重要だ。ものの名前というのはほとんど命だ、と僕は感じている。名前の悪いものは、絶対に良いものにはならないのだ。たとえ、一時的に良くても、歴史に残らない。最後に残るのは名前だけである、といっても良いだろう。
MORI LOG ACADEMY: 名前の大切さ

28日アップのホームルームより。タイムリィな話題w