天涯の砦

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

読了。

田窪は一気呵成に言った。
「もう一度言うぞ、みんな。私たちは今、全員まとめて同じ墓に埋もれかねない状況に置かれている。死にかけているんだ。努力をためらうべきじゃない。命を賭けても賭け金が高いということはない。それをわかってくれ。私はより積極的に助かろうとしたい。いいかね」

軌道ステーション“望天” で起こった大事故。ステーションから切り離されて、残骸は虚空を漂流する。だが、隔離されたわずかな気密区画には数人の生存者がいた。彼らは空気ダクトによる声だけの接触を通して、生存への道を探る。真空という敵との絶望的な闘いの果てに、“天涯の砦”を待ち受けているものとは――。


うん、面白かった。
ただ、これなら「時砂の王」 や「漂った男」 に比べると、それ程でもないような……まあ、分量に対して感動的な場面が少ないという、比率の話ってだけかもしれません。漂った男は短編ですしね。
その代わり、のめり込み加減で言えば他の話と遜色はないと思います。これは逆に、分量が多いわりには、というプラス面かも。
204頁「手詰まりだな」 ここでわりと良い奴かも? とか思ったのに……。211頁「おにい……」 ここら辺りを読む前まで、正直「子供はこの状況じゃあ役に立たないし……」 とか思ってました。すんません。259頁「だが、まあ、生きている」 締めの言葉って感じで。266頁「こんな文句で弔ってもらえるなら」 この辺りを読んでる時はまさに泣き笑いしてました。うああ。


作者のブログをのぞいてみると、色々やってて新刊も出そうな気配なので一安心。その前に千マイル急行とか導きの星とか読んでもいいけど、いまさら感が……。