輪環の魔導師 闇語りのアルカイン

輪環の魔導師―闇語りのアルカイン (電撃文庫)

輪環の魔導師―闇語りのアルカイン (電撃文庫)

読了。「わ-4-25」 とか書いてあるけど、この作者はこれが初めてですよ。

「人生における幸福とは、たとえるならば魚釣りのようなものだよ」
セロは首を傾げた。
アルカインはおどけて、片目を瞑って見せる。
「一つ、自分で釣った魚はおいしい。
二つ、釣り逃した魚は大きく見える。
三つ、小さな魚は、たくさん獲れるとなんとなく幸せ」

見習い薬師であるセロは、優秀な魔導具職人である祖父を持ちながら、魔導具を扱うことすら出来なかった。そしてそんなセロの元を訪れたのは、王立魔導騎士団のハルムバックだった。彼は、祖父の遺した魔導具に興味があると言うが……。


面白い。これが25作書いた作家の実力か……!*1
実に良質のファンタジーでした。350ページとそこそこ長いんですが、続きを読むのが楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。しかも電車の中でも家の中でも、さらっと取り出して4,5ページ読むだけでも、楽しみが全く損なわれなくて、すっと物語の中に入っていけました。安定というのはこういうことなんでしょうかね。
ていうか、うん。猫ですよ、猫。猫がケーキナイフ振り回して「そういうのを三下っていうんだよ」 ですよ。もうなんかこれだけでポイントアップですよ。上の引用文は、三つ目の「なんとなく幸せ」 ってフレーズがいいですよね。
あと猫以外は、181頁「――許さない」 いくつか感想を目にしてましたので、ヤンデレが出てくるとは知ってましたが……ちょっと想像と違いましたね*2。そういうわけで、「正直ヤンデレは御免被る」 とか思ってる私ですが、これには割と好意的ですね。219頁「覚えておけ、若造――!」 オヤジの見せ場って大好きです。たとえ噛ませ役だとしてもね!


3月に2巻が発売されるようですので、非常に楽しみです。ただ流石に、他のシリーズに手を出す気は起きないかなあ……。長すぎます。




余談。
イラストがなかなか、ファンタジーという雰囲気で非常にマッチしてる感じです。ただ口絵のカラーイラストと挿絵のモノクロイラストで印象が違うのは何ででしょうか……。口絵の方がすっきりしてて好きなんですが。

*1:なんだか魔王の台詞みたいですが、それはともかく。

*2:『嘘つきみーくん』 が標準になってるせいか、私の中でのヤンデレの定義は「想い人まで手にかける」 となっています。