アレクシオン・サーガ

読了。

「……アレク?」
小さな、ごく小さな声で、ヘロディアがささやいた。
「何があった、アレク? あの雪と、氷と長い年月の下で?」
「――何も」

異邦人の母を持ち、その美しい容貌と智、そして力を兼ね備えた王子アレクシオン。だがその聡明さと異貌がゆえに王から忌まれ、身分を捨て出奔することになる。母が残した唯一の形見である緋色の剣と己の出生の秘密を求め、アレクは旅立つ――。本格ヒロイック・ファンタジー開幕。


付箋を貼れない面白さ。
つまり雰囲気が面白いということです。開始数ページで主人公の略歴を長々と語り出したりして、初っ端からすごい密度だよ! とか思ってたんですが……そこから一歩踏み込んで物語に没頭するのに、さして時間はかかりませんでした。少し前に読んだ師走トオル火の国、風の国物語」 と共通点が目立つ主人公ですが、こちらの方は萌えだとかコメディだとかを気にしなくて良い、堅い芯の通ったファンタジーですね。
ノベルジャパンに連載をしていたらしく、前半の 2/3 は章ごとに小分けにされていて同じ説明が繰り返されるので少々くどいんですが、書き下ろしである「獅子の目覚める刻」 の話の密度がまさに圧巻。残り 1/3 ページのくせに、印象としては連載分と半々くらいの分量に思えました。
これが主人公アレクの幼少編で、主人公のキャラクタに厚みが増したのは良いんですが、ただ、それ以外が薄いのは如何ともしがたいですね。表紙の少女なんて「千年前の約束が〜」 とか言い出しますが、それよりも冒頭に出てきたオッサンの方がよほど手厚く描かれています。少女の方なんて、メインに絡んでくるかと思いきや、1/3 くらい読み進むと急に離れ離れになるし!


しかし、HJ文庫に関してはそれ程心配してないんですが、ノベルジャパン連載というのがどうにも不安です。まあコンスタントに発表されている*1のは嬉しい限りです。次も期待。

*1:のかどうかは知りませんが、まあ2巻は出てますし。